2021年01月09日

壽山古道−9:「哨船頭古道」−7:「打狗水道」

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【写真説明】左写真は、旧打狗水道浄水池入口。団体で見学申請すれば入れて貰える。同写真右側に覗くドームは浄水井戸の上部構造物。中央写真は浄水池。右写真は、浄水池下方の市街地内に残る打狗水道量水器室、浄水池同様市指定古蹟だが、全く保護されている気配無し。文化資産局の登録申請文の中には、西洋古典様式とかトスカナ柱とかの単語が散りばめてある。

打水にしても龍目井にしても全山水源に乏しい中の小さな水源に過ぎない。これでは日本領有後
爆発的に増えた人口の水は賄えない。台湾総督府は下淡水渓(現在の高屏渓)から水を引いてくる工事に取り掛かる。明治43年(1910年)起工、大正2年(1913年)、給水開始。実際高雄市民に給水したのは、今も現役、高雄市指定古蹟、文化資産局登録名「打狗水道浄水池」であり、現在は高雄水道浄水池とか寿山配水池と呼ばれているが、浄水池正門に嵌められたプレートには「台湾省自来水公司第七区管理処/澄清湖供水廠寿山加圧站」と刻まれている。自来水とは日本語では上水道のことである。直径6bのドームを頂く浄水井戸と長さ48b、幅25bの浄水池から構成されるが、後者は上部に厚さ30aの砕石層と60a厚の土が載り、地表にはトーチカ上の通気口が突き出している。場所は、寿山山中、嘗ての寿山館、高雄神社の東側下部にあり、浄水井戸は市街地からも良く見えている。

Google Mapで浄水池附近を眺めていたら、その下、寿山山際の住宅街の中に「打狗水道」と云う標記が飛び出して来た。現場に足を運び驚嘆した。一つはその建造物は今はどう見ても個人の人家としか思えないこと、色々な生活雑貨が散乱している。もう一つは、にも拘らず日本時代構築と明らかに判る建造物の優雅なデザインである。筆者の知見に依ると、水道施設の一つ、水錶室、様々な呼称があるが、要は水道メーター室である。その後、文化資産局の「打狗水道」の登録内容を読んでいたら、「量水器室」として浄水池と共に古蹟に指定されているではないか!これには唖然とした。ウィキペディアの中国語版も日本語版も「打狗水道」の項には詳しい説明が出ているが、この量水器室の紹介は皆無だ。現場にも何の表示も無い。打ち捨てられたままの家屋に等しい。尚、ウィキペディアでは日本語版は「打狗水道」であるが、同じ項目の中国語版は何故か「高雄水道」である。

薄々感じていたのだが、日本時代の上水道施設遺構は非常に多く残っていることである。国民の基本インフラに関わる施設なので数の多さは判るが、敬服すべきは百年を越えても現役を保つ設計と土木技術の質の高さである。日本時代の上水道遺構の一覧はウィキペディア中国版(「台灣日治時期水道設施」)のみで閲覧出来る。何とも豪華なリストであるが、これ以上深入りはすまいと思った。筆者ももうそんなに時間が無い。打狗水道に関しても、筆者の視野に入っていたのは、寿山山中の浄水池だけである。調査を進めるに従い、筆者自身の視野狭窄さに呆れかえってしまった。現在紹介している初回起工以外に日本時代だけでも五回の拡張工事を実施している。

打狗水道は三システムから成る;即ち、取水、濾過、給水である。初起工時の打狗水道の各々のシステムを担ったのは以下の通りである。これら三システムの位置と距離に関してはこのダイヤグラムを参考にして欲しい:

*取水:竹仔寮取水場(現台湾自来水公司竹寮取水站:大樹区竹寮里)
*一次浄水、濾過:小坪頂水源地(同坪頂給水廠:大樹区小坪里)
*二次浄水、給水:打狗水道

この内、竹寮取水廠だけは以前弊ブログ「『水の古道』曹公[土川]−5」で紹介したことがある。当時既に市指定古蹟だったが、打狗水道との関係は全く無知だった。他方、坪頂給水廠内に市指定古蹟は無い模様だ。但し、周辺には古蹟指定にはなっていないが、指定価値のあるものが打ち捨てられているのを、草莽の台湾人有志のブログにて知った。給水廠の東側数百bのパイナップル畑の中に、忽然(最近本ブログでこの副詞が多用されている?)と量水器室と思われる遺構が起立していた。最近まで「小坪頂大樹鳳梨種苗養成所遺址」、日本時代のパイナップル種苗育成所と特定されていたものだ。重要な事は、既に竣工後百年を越えている事、戦後も廃棄されず今もパイナップル栽培の邪魔になっていることである。

片や、市指定古蹟でありながら保護作業が加えられず廃棄処分相当の量水器室遺構と古蹟指定では無いが廃却されずにいる遺構、どちらも打狗水道システムを担っていた。敬意を表し大判で以下現況写真を掲載する。(続く)

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posted by 玉山 at 00:00| 台北 ☁| Comment(0) | 壽山古道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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