六亀警備道の線上に現在二つの森林遊楽区、藤枝国家森林遊楽区と扇平森林生態科学園(旧林務局扇平林業試験場)があり、共に茂林国家風景区の中に含まれる。この二つの森林遊楽区は日本時代、六万ヘクタールに及んだ京都大学の演習林の一部だったものである。当時の台湾には京都大学以外に東京大学(当時の新高郡・竹山郡)、北海道大学(同能高郡埔里)、九州大学(同台北州文山郡)が演習林を総督府から払い下げられており、京都大学の演習林面積が一番広大だった。
藤枝はその名の通り東海道筋の宿場町の名前を冠したもので今でも園内に駐在所跡が残る。扇平という地名は日本の各所にあるが、日本時代から今の地が扇平の名前で呼ばれていたような形跡が無く、戦後何故このような日本風な名前が付けられたのか定かではない。藤枝森林遊楽区に入る為には入山証、入園証等の取得は必要ないが、扇平科学園の方は入山証の取得に加え予め予約する必要がある。両園とも昨年の台風禍で途中の林道が崩壊して最近まで入なかったが、やっと復旧しそうな見込みが立ち始めた頃、先般の梅雨に因る集中豪雨が到来、開園が先延ばしにされている状態にある。
鳴海三山の稜線と鳴海山の北に位置するこの扇平生態科学園を結ぶ登山道を今では扇平古道と称する場合があり、通しで十キロにも満たず四時間ぐらいで歩き通せる。加えて、登山口の標高が既に千メートル程あり三山の標高が千五百メートル程度なので起伏が小さく、道はよく踏み歩かれ、沿線の樹相も美しく日帰りハイキングには最適な場が提供されている。この扇平古道が狭義の古道としての六亀警備道であり今現在唯一一般の人が登山道として歩ける部分である。
当時、原住民を包囲するとは山奥深く追い上げ締め上げるということを意味しており、六亀警備道のごく一部には過ぎないとは云え、鳴海三山の稜線から[艸/老]濃渓を見下ろし、又逆に[艸/老]濃渓沿いにこれらの山の稜線を見上げる時、当時の包囲網線=隘勇線が持つ原住民族に対する過酷さの一端が透けて見える。古道上には所々木の枝に引っ掛かっている鉄条網と碍子(がいし)の一部が残っているらしいが私自身はまだ目にしたことがない。>(メルマガ「台湾の声」2006年7月3日掲載分終わり)
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